肺高血圧症ではどんな治療が有効なの?
 

肺高血圧症の重症度と治療の関係

 

これまでは、肺高血圧症には適切な治療薬がなく、長い間治療を受けていても患者さんの生活の質(QOL)の改善や著しい治療効果は、なかなか得られませんでした。しかし、最近になっていろいろな薬が開発され、治療の成績もあがってきました。特に、血管拡張薬を使った治療はこれまで以上に高い有効性が示されています。
なお、治療をはじめるにあたっては、それぞれの薬の特徴や作用・副作用を十分に理解し、主治医とよく相談しましょう。
 
 

●薬物治療:血管拡張療法


肺高血圧症の患者さんでは肺細小動脈の内腔がせまくなっていますが、この肺細小動脈を拡張させることにより血液が流れやすくなり、肺動脈圧が下がります。これにより、拡張した心臓や太くなった肺血管への負担が軽くなります。治療薬の中では、まず経口薬を使います。それでも効果が不十分な場合には、注射薬(静注療法)が必要になります。

1)経口血管拡張剤

・プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)誘導体製剤(ベラプロスト)
・Ca(カルシウム)拮抗薬 など


2)プロスタサイクリン持続静注療法

血管を拡げる作用のあるプロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)製剤(エポプロステノール)を持続的に静脈内に注入する。この薬は体内に入ると数分以内に分解され作用を失ってしまうため、下記のようなポンプを用い持続注入する。
3)一酸化窒素(NO)ガス吸入療法
一酸化窒素を特殊な装置を使い希釈して吸入する。高い濃度で吸入すると肺が障害を受ける。
※一酸化窒素には、肺血管を拡げ、血液を流れやすくする作用があります。一酸化窒素は気体なので吸入すると肺の血管だけに作用して、全身の血圧を下げることが少ないため有効な治療法です。日本国内では、いくつかの病院で行われていますが、現在のところ肺高血圧症への保険適応は取得されておりません。(2003年12月現在)
●薬物治療:抗凝固療法

肺高血圧症の患者さんでは、血液が固まりやすく、肺動脈内に血栓がみられることがあります。このため、血栓予防に抗凝固薬や抗血小板薬を使用した方が予後がよいとの報告があります。ただし、喀血のある場合は使用しないほうがよいでしょう。

1)抗凝固薬

・ワルファリン:血液を固まりにくくする


2)抗血小板薬

・アスピリンなど:血小板の凝集をおさえる

 

●薬物治療:その他


肺高血圧症により心不全が悪化した場合は、入院が必要です。その上で、心筋の収縮力を増強する強心薬や血管拡張薬、腎臓に直接作用して尿量を増やす利尿薬が使われます。

1)強心薬(持続静注)

・カテコラミン類(ドパミン、ドブタミン)
    ・・・強心配糖体よりも強力な心筋収縮力をもち、重篤な心不全に有効
・強心配糖体(ジゴキシン)・・・心拍出量の増加、頻脈の軽減
・PDE-III阻害薬(アムリノン、ミルリノン、オルプリノン)など・・・強心作用と血管拡張作用をもっている


2)利尿薬

・ループ利尿薬(フロセミド)
・サイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド等)
・カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレン)
 ※浮腫の治療:使い過ぎると全身の水分量が減り、かえって具合が悪くなることがある。

 

●酸素吸入療法


肺高血圧症では、心拍出量が減少しており、全身へ酸素を運ぶ能力が低下してしまいます(低酸素血症)。特に労作後や睡眠後は著しく低下することがあります。酸素吸入は通常の空気より高い濃度の酸素を吸うことで、この症状を改善します。




●外科療法:肺移植


肺高血圧症の最終的な治療法として、肺移植、心肺移植があります。欧米では1991年から本格的に移植療法が行われてきました。ただし、日本では、脳死や臓器提供が少ないなどの問題があり、移植に到達できる症例が少なく、また待機している患者さんも多いのが現状です。